皆、それぞれの道

今年でmuskaは10周年。
確かちょうどこの時期に、muskaの最初のアイテムを作り終えて、取り扱いを希望していたセレクトショップへ持ち込んだような気がします。

その当時、お互いの夢を語り、励まし合っていた友人と、スーパーで買ったお酒とおつまみを手に、夜の代々木公園でピクニックをしながら、「muskaっていうジュエリーブランドをやりたいんだよね」と話していたのが、ついこの間のようです。

 

ブランドを始めたいとは言っても、何から何まで、初めてのことばかりでした。
当時の私には、Adobeのイラストレーターやフォトショップを使いこなすスキルも、スチール撮影の知識もありません。

そうしたことに長けた知り合いも全くおらず、頭の中にあるmuskaの世界観を表現するのに四苦八苦。本当に手探りの日々でした。 

 

どうやってmuskaを作っていったのだっけ…と思い返すと、一人でバタバタしているうちに、まるでロールプレイングゲームのように、不思議とその時々で必要なスキルを持つ人たちが一人、二人と現れ、一緒に試行錯誤してくれたのでした。

今思うと、全てが本当に不器用なやり方でしたが、あの頃経験した一つ一つが血肉になっているなという実感があります。 

The door of muska's previous studio in kuramae
当時のアトリエ

いざ卸先が決まった後は、パッケージを用意する必要がありました。
当時は小ロットで箱を作れるようなところがなかなかなく、困っていたところ、不憫に思ったパッケージ工場のご夫婦が、日中の営業が終わった後の時間を使って、特別に小規模な数で制作してくれました。

箱に入れるポーチは、友人が知り合いのデザイナーさんをあたってくれて、その人に相談しながら、シフォンの柔らかな白い生地とカラフルな色糸で、中のアイテムが透けて見えるような、包み込まれているようなイメージで作ってもらいました。 

その後、パッケージ工場のご夫婦が「お店にmuskaのジュエリーを見に行ったよ」と笑顔で話してくれたことや、デザイナーさんからポーチ制作のお礼としてay(あい/月の意味)シリーズのネックレスを頼まれ、彼女の好きな色合いで夜な夜な編んだことは、今もいい思い出です。 

 

先日、初期にサポートしてくれたうちの一人に会いに行く機会がありました。長野・諏訪で「あゆみ食堂」を営む、料理研究家の大塩あゆみさんです。 

The front of Ayumi Shokudo restaurant

あゆみさんは当時からフリーの料理研究家として東京で活動しており、様々なイベントでケータリングを手掛けていました。

友人のイベントで彼女の料理に出合い、その美味しさに感動した私は、2014年に蔵前のタイガービルにアトリエを構えた際、関係者向けのオープニングパーティでのケータリングをお願いしました。

オープン直後で予算が限られているにもかかわらず快諾し、振る舞ってくれた彼女の料理は、色鮮やかでエナジーたっぷり。あの時食べた鯖サンドは未だに記憶に残っているくらい格別な味でした。

 

去年、あゆみさんが移住先の長野から東京に来た際、muskaのお店にも寄ってくれました。

お互いの近況など色々話したのですが、彼女が語る長野での暮らしぶりがとても素敵で、遊びに行きたいという気持ちがむくむくと湧きました。

それで、弾丸旅ではありましたが、あゆみさんのご飯を久しぶりに食べに長野へと赴いたのでした。 

その日のランチメニューは在来種の野菜を使ったプレートで、シシトウのカレーに、ルバーブのチャツネや、ズッキーニのフライ、キュウリのマリネなど盛りだくさん。

料理によって変わる、絶妙な塩とスパイス加減。野菜本来の味をぎゅっと濃く味わうために、必要なものを最低限、というのが彼女らしい。

みんなでたっぷりのオージャスを体に入れて、帰路についたのでした。 

The lunch plate by Ayumi Shokudo

気付けば、手を動かし続けて10年。あの時に助けてくれた周りの友人たちも、生活スタイルを変えながら、どんどん自分の仕事や生き方に向き合い、果敢に変化していっています。

そんな姿に励まされながら、私も綺麗なものを作り続けたいと思う、10年目の年です。

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あゆみ食堂

〒392-0006 長野県諏訪市元町5−12

0266-75-2720

Instagram https://www.instagram.com/ayumishokudo/