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アリゾナの陽光を浴びて

今年も1月末から2月初めにかけ、アリゾナのツーソンに、宝石の仕入れのために行ってまいりました。

ツーソンは世界最大級のジェムショーが開かれることで知られ、期間中は街中から郊外までもが会場となり、世界中からさまざまな宝石商や、標本や化石などの業者、そしてバイヤーが集まります。鉱物であれば「ないものはない」と言っても過言ではありません。

大きく真っ赤な太陽に、ターコイズカラーの青空。サボテンがそびえる乾いた砂地には、巨大な白いテントが延々と続きます。1か月以上続くジェムショーの開催中は、どこも人で溢れ、ストリートフードの屋台が立ち並び、街全体が活気づいているのが感じられます。

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あちこちに生えているサボテンは、鳥の巣にも

今回はロサンゼルスからツーソンまで、国内線のフライトが希望の時間帯で取れず、州都フェニックスから車を借りて向かうことになりました。2、3時間のドライブとなります。現地では車での移動が基本なので、レンタカーは欠かせません。

アメリカでの運転はハイウェイを使うことが多く、皆120キロくらいは平気で飛ばす上に、車の故障や事故もよく見かけます。なので、1週間以上滞在していると、一度か二度はひやりとする瞬間が。

幸い、事故は起きなかったものの、いざツーソン市内に着いて駐車しようとしたら、キーの電池が切れて、車の鍵がかからない! 東京からツーソンまで、計16時間の長旅の後の疲労困憊な状態で、最寄のレンタカー営業所があるツーソン空港まで泣く泣く新しい車に交換に行く羽目になりました(涙)。

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ハイウェイ沿いを貨物列車が行く

仕入れなどで4日以上出張が続くときは、ホテルではなく台所付きの家をAirbnbで借りて、玄米を持ち込み、自炊することにしています。

シンガポールに住んでいた頃、日本とシンガポールを頻繁に行き来して仕事をする中で大きく体調を崩した経験から、今ではこのスタイルに落ち着きました。
また、仕入れの最中は、ほとんどの展示会が10時にオープンし、17時にはクローズするため、いちいちお昼を食べに出かける暇はなく、お弁当を用意するのがちょうど良いのです。

ジェムショーの時期は、早めに探さないと良い物件はあっという間に埋まってしまいます。プールや、夜にのんびりできそうなホットタブがついていたり、素敵な家やコンドも多いです(夜はクタクタで結局入らないことがほとんどですが笑)。
また、オーナーの中には、おすすめのメキシカンフードなどローカル情報を教えてくれる親切な人もいて、それも滞在中の楽しみの一つです。

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街中にメキシコの香りがする

着いた初日は、近くのオーガニックスーパーに行き、滞在中の食料を買い溜めします。アリゾナはホールフーズ・マーケットやスプラウト・ファーマーズマーケットがあちこちにあるので、食材だけでなく、お茶やお菓子なども物色して楽しみます。

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車で買い出しへ
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体力勝負なのでしっかり食べます

1週間ほどの短めの滞在でしたが、非常に感慨深いものがありました。ジェムショーにようやく、コロナ禍前の賑やかさが戻ったなと感じたのです。

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ミネラル小物を探しに。原石も会場ではゴロゴロ転がっている

宝石ショーの会場では、去年はアジア人のバイヤーをほとんど見かけず、また、仕入れをしたかったのに出展できておらず、会えなかった宝石商もいました。

何かが変わってしまったというわけではありませんが、少し空気がピリッとしていて、皆、新しい状況をなんとか乗りきろうとしている感じがあり、私もかなり神経質に感染対策をしての参加で、あまりショー自体を楽しむ余裕はありませんでした。

それに比べ、今年はたとえば、なんと4年ぶりに懇意のオパールの宝石商と再会できました。

お喋りに花を咲かせ、別れ際にはあれやこれやとオーストラリアのかわいいお土産を持たせてくれる、チャーミングなオーナーが私は大好きで、ときどきお互いの近況をメールし合ってはいましたが、やっと再会できた嬉しさといったら…。

また、ここ数年リモートでやりとりし、宝石を送ってくれていたサファイアの宝石商とも再会。質が高いサファイアをじっくり選んで仕入れることができました。彼らにはコロナ禍の間、ずいぶん助けられました。リモートでの仕入れは大変なことが多く、リスクも高いため、よほど仕事が丁寧で、かつ信用していなければ不可能です。

以前、サファイアを遠隔で送ってくれたときに、スモールギフトとして、オレンジと紫のバイカラーサファイアを同封してくれたことがありました。今回、それを使って自分用に制作したリングを身につけていき、彼らに見せるととても喜んでくれました。

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今回身につけていったジュエリー。真ん中のリングが彼らのサファイア等で作ったもの。
奥のイヤリングも大好きな宝石商のオパールを使用

私のような制作サイドの人間にとって、ジュエリーは身につけるものというより「作るもの」という感覚が強く、自分用に制作をすることはあまりありません。

それでもごくまれに、仕入れで手元に置いておきたい宝石に出合うことや、宝石商が私好みの宝石をプレゼントしてくれることがあり、それを使って自分自身に作るジュエリーには、こうした仕入れの思い出が詰まり、ずっと身につけるものになります。

muskaをはじめたばかりで心細いことも多かった10年前には、仕入れがこんなに楽しくできるようになるとは想像すらしませんでした。
今回は特に、会場の熱気や嬉しい再会につられ、いつも以上にワクワクしながらの仕入れとなり、その気持ちがそのまま反映されたような宝石のセレクションになった気がします。ジュエリーに仕立ててお披露目するのが楽しみです。

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